| 店名 | サクラカフェ&レストラン日暮里(SAKURA CAFE NIPPORI) |
|---|---|
| 住所 | 東京都文京区千駄木3-43-15 サクラホテル日暮里 1F |
| アクセス | 東京メトロ千代田線 千駄木駅 徒歩3分 / JR・千代田線 西日暮里駅 徒歩6分 / JR 日暮里駅 徒歩6分 |
| 営業時間 | 24時間営業・年中無休 |
| 電話 | 03-5685-6111 |
| 席数 | 96席(ペット可のテラス席あり) |
| 備考 | ホテル併設。 |
| 公式 | sakura-cafe.asia/nippori |
| @sakuracafehotel_nippori |
OFF NOTES SPECIAL FEATURE / NIGHT WALK
深夜散歩という遊び。
終電後の東京を、始発まで歩く。
終電後の東京を、
終電が終わってから、
東京を、
01:35 — TOKYO, ON FOOT
深夜散歩とは何か— 終電後から始発までの、東京の五時間
深夜散歩というのは、終電が終わってから始発が動くまでのあいだに、街を歩くことだ。それだけ。
目的地は決めてもいいし、決めなくてもいい。どちらにしても、着いたところで何も起きない。店は閉まっているし、誰も待っていない。だから、歩くこと自体が目的になる。
昼の散歩と決定的に違うのは、街から人がいなくなることだと思う。人がいなくなると、街は建物と光と道だけになる。毎日通っている道でも、それだけで別の場所になる。秋葉原は0時を回ると人が消えるし、アメ横は3時にはシャッターが全部下りている。同じ座標なのに、行ったことのない街の顔をしている。
もうひとつ、夜には夜の贅沢がある。昼は自販機の前で立ち止まらない。後ろに人がいるかもしれないし、まじまじ見ていたら変だと思われる気がする。夜は誰もいないので、どうでもいいものを、五分でも十分でも眺めていられる。
歩く場所は、街灯があって、道が広くて、24時間営業の店が点在しているところがいい。逆に、住宅街だけを延々と歩くのはすすめない。暗いし、見るものがないし、単純に不審者になる。
持ち物はほとんど要らない。財布と、スマホと、それを充電できるもの。あとは歩ける靴。荷物が多いと、それだけで嫌になる遊びだ。
そうやって歩いているうちに、いつか空が明るくなる。これは自分の意思と関係なくやって来る。終わりが決まっているから、気楽に始められる。
説明はこのくらいでいい。実際にやるとどうなるのか、一夜ぶんを通しで置いておく。
0時20分、
行き先はだいたい決めていたけれど、目的はなかった。ただ、夜の東京を歩いてみたかった。それだけだ。
帰り着いたのは5時ちょうど。四時間四十分のうち、三時間四十分は歩いていた。残りの一時間は、二軒のカフェに座っていた。
眠らない街が、眠る
人形町 → 秋葉原
0時20分に出たのには、一応の理由がある。0時前だとまだ人が残っていて「深夜」にならないし、かといって2時を過ぎてから出ると、いちばん面白い時間帯を寝て過ごすことになる。0時台に出れば、街が寝入るところから、完全に寝ているところ、そして起きはじめるところまで、通しで見られる。
人形町を出て、小伝馬町を抜けて、秋葉原のほうへ向かう。
高架下の歩道に出ると、車の音が遠くなった。信号は動いているのに、渡る人がいない。青になって、誰も渡らないまま赤になる。それが何度か続く。
秋葉原に着いたのは0時52分。
普段のこの街はあれだけ騒々しいのに、0時を回ると人が消える。とはいえ、まだ1時前だ。チラホラと人影は見える。看板もまだ灯いている。完全には寝ていない。
街が寝入る直前の、
不忍池のベンチは、埋まっていた
秋葉原 → 上野
上野に着いたのは1時14分。交差点にはまだ人がいた。カラオケの看板が煌々としていて、ここもまだ起きている。
そこから不忍池まで下りると、急に静かになる。
ベンチにはカップルが何組も座っていて、それぞれ思い思いに語らっていた。何組もいるのに、どの声も聞こえてこない。みんな、この時間の音量を知っているみたいだった。
邪魔をしないように、池の縁を歩いた。水面に街灯の光が伸びていて、動いているのはそれだけだった。
誰も見ていない自販機を、じっくり見る— 深夜の「肉のむら八」の冷凍肉自販機
上野 → 西日暮里
上野を離れると、街灯と自販機以外に光がなくなる。歩道はまっすぐで、前にも後ろにも人がいない。
その途中で、変な自販機に出会った。
「肉のむら八」の冷凍肉の自販機だ。生ぎょうざ550円、肉シューマイ650円、ロースハム切落し650円、牛タンサイコロカット700円。全部冷凍で出てくるらしい。
昼間なら、たぶん目にも留めない。夜だから妙に目立っていて、なぜかついつい見てしまう。
序章に書いた
深夜1時55分、24時間営業のサクラカフェ日暮里に着いた
三時間以上歩くつもりなら、途中で一度は座ったほうがいい。座らないと、後半はただの我慢になる。この夜のルートも、正直なところ、この店で休むことから逆算して引いた。
ピンクの看板が、
サクラカフェ日暮里。サクラホテル日暮里の1階に入っている、24時間営業のカフェだ。名前は日暮里だけれど、住所は文京区千駄木で、西日暮里駅からも千駄木駅からも歩いて数分の場所にある。
入口の外にはテラス席があって、そこにゲストの外国人が座っていた。ホテル併設のカフェなので、宿泊客がそのまま下りてくる。この時間でも人の気配があるのは、そのせいだと思う。
中に入る。電球の連なった天井、色のばらばらな椅子、隅に置かれたピアノ。深夜だけれど、照明は落としていない。
注文はカウンターで先に払う方式。深夜の時間帯は、ホテルのフロントを兼ねたスタッフが対応してくれた。
深夜テンションではあるのだけれど、そこはかとなく丁寧さが残っている。あの感じは、ホテルの人だからだと思う。
ひとつだけ残念なことがあって、店内のメニューを見ると、フライドポテトとフィッシュ&チップスには「〜23:00」と書かれている。つまり深夜に来ると、揚げ物は出ない。
それで、スパイシーチーズナチョス700円を頼んだ。
これが正解だった。塩気がしっかりきいていて、一時間半ほど歩いてきた体に、そこだけ染みていく感じがある。アイスコーヒーと一緒に流し込むと、疲れが一段階だけ下りた。
冷蔵庫には世界のビールが詰まっていて、90分飲み放題の貼り紙まで出ていた。僕は飲めないので眺めるだけだったけれど、深夜にこれを開けている人がいるのだと思うと、それはそれで良い。
25分座って、外に出た。
いつか、ここに旅人として来て、テラスの誰かと話してみたいと思っている。何度か来ているけれど、まだ一度も実現できていない。
誰もいない上野恩賜公園、午前2時
サクラカフェ → アメ横
帰路につく。来た道とは少し違う道を選んだ。
このあたりまで来ると、明かりの少ない道もそれなりにある。出る前にコンビニと24時間営業の店の位置を頭に入れておくと、安心感がまるで違う。二軒のカフェに寄ったのも、半分はそういう理由だ。
途中、誰もいない公園が目についた。滑り台も、ベンチも、砂場も、全部そのままの形で置かれている。昼はここに子どもがいるはずなのに、今はひとつも動いていない。
上野恩賜公園まで戻ってくると、印象がガラリと変わる。
昼の喧騒とは正反対で、とにかく、だだっ広い。イベントのときにはテントが並ぶあの広場が、深夜はこんなものかと思うくらい、何もない。
広さというのは、
3時11分のアメ横は、匂いだけが残っている
アメ横に着いたのは3時11分。
シャッターは全部下りていて、通りに人はいない。発泡スチロールの箱が畳まれて積んである。看板だけが、誰も見ていないのに光り続けている。
ここは、アジア特有の匂いがする。
魚と、香辛料と、少し湿った段ボールが混ざったような匂いで、店が閉まっていても消えない。むしろ人がいない分、匂いだけが濃く残っている。
なんだろう、
生搾りオレンジジュースの自販機を、隅々まで見る— 秋葉原、1杯350円
秋葉原の手前で、オレンジの自販機の前で足が止まった。
生搾りオレンジジュースが1杯350円で出てくる、あの機械だ。中でオレンジが段になって並んでいて、ライトに照らされている。
昼も気になってはいる。でも、昼は立ち止まらない。後ろに人がいるかもしれないし、まじまじ見ていたら変だと思われる気がする。
夜は違う。誰もいないので、隅々まで見られる。オレンジが何個積んであるか、カップがどこから出てくるか、支払い方法がいくつあるか。全部確認してから、結局買わずに歩き出した。
午前3時45分、無人の「スマートカフェ秋葉原」には始発待ちの人がいた
3時45分、スマートカフェ秋葉原に着いた。
2026年の3月にできたばかりの、完全無人・24時間営業のカフェだ。スタッフはいない。入ってすぐのところに自販機が2台あって、そこでドリンクを1杯買えば、あとは時間無制限で座っていられる。
今日は人が少なかった。それでも、始発を待っているらしい人がチラホラいる。
同じ空間にいて、同じ時間を待っているのに、全員が違う方向を向いている。誰も誰とも喋らない。奇妙なもんだと思う。でも、この奇妙さがちょうどいいから、みんなここにいるのだとも思う。
アイスコーヒーが、
無人の自販機で出てくるコーヒーに、正直あまり期待していなかった。歩いたあとだから何でもうまいのかもしれない。それにしても、うまかった。
35分座って、出た。
秋葉原で始発を待つなら、ここでいいと思う。座れて、電源があって、誰にも話しかけられない。深夜に必要なものは、だいたいそれで足りる。
そして、夜が明ける
スマートカフェ → 人形町
神田を4時36分に通過した。
このあたりで、空の色が変わりはじめる。黒だったところが、少しずつ青くなって、建物の輪郭が戻ってくる。街灯はまだ点いているのに、もう街灯の出番ではない。
5時ちょうど、
四時間四十分。三時間四十分歩いて、一時間座っていた。何かを見つけたわけでも、誰かに会ったわけでもない。
ただ、いつも歩いている街の、誰もいない時間だけを見てきた。それだけのことなのに、しばらく忘れないと思う。
ルートと、区間ごとの所要時間— 人形町から秋葉原まで32分、秋葉原から上野まで22分
歩いた道と時間を、最後にまとめておく。深夜に東京を歩くと、どのくらいで、どこまで行けるのか。実測はこうだった。
| 時刻 | 地点 | 区間の所要 |
|---|---|---|
| 人形町 出発 | — | |
| 秋葉原 | 32分 | |
| 上野(不忍池) | 22分 | |
| サクラカフェ日暮里 着 | 41分 | |
| サクラカフェ 出発 | 休憩 25分 | |
| アメ横 | 51分 | |
| 秋葉原 | 27分 | |
| スマートカフェ秋葉原 着 | 7分 | |
| スマートカフェ 出発 | 休憩 35分 | |
| 神田 | 16分 | |
| 人形町 帰宅 | 24分 |
歩行の合計が220分で、三時間四十分。休憩が合計60分。あわせて四時間四十分だった。
距離はきちんと測っていないけれど、この時間ぶん歩いたのだから、たぶん15km前後だと思う。速く歩いたつもりはない。信号でほとんど止まらないので、昼に同じ道を歩くよりは確実に速い。
ひとつだけ意識したのは、出発点に戻ってくる輪にしたことだ。片道でどんどん遠くへ行くと、帰る手段がなくなる。始発を待てばいいと思うかもしれないけれど、それは計画ではなく事故だ。
サクラカフェ日暮里
もう一軒のスマートカフェ秋葉原は、